密かに作業していた、新入部員KSK君の1979年スティングレイが完成しました。
70年代末期~80年代初頭、キッズ達の興味は完全にBMXに移行していました。スティングレイモデルが終焉を迎えるこの時期のモデルは、それ以前のモデルに漂っていた「マッスルバイク」の華やかさがトーンダウンしていますが、その個性の薄さを逆手に取り、年式の仕様にとらわれず、しかし、その年式イメージから大きく逸脱しないよう気を付けながら部品をセレクトしたレストア/カスタムです。
フレームは1979年製造。リアブレーキキャリパーのマウントが無いのでJ38-6/コースターのシングルスピードモデルのフレームで、この年から塗装が2トーンに。これは3パターン有った中のひとつ、スカイブルーxフロスティシルバー。(他にカーディナルレッドxゴールデンイエロー、エメラルドグリーンxゴールデンイエローが有りました) フレームやフォーク、キックスタンド等は一旦全てバラし、全て綺麗に洗浄しつつ可能な限り磨き上げました。
フロントホイールはシュウィン純正の SCHWINN TUBULAR S-7刻印入り,リム裏の錆は極力除去した後、錆び止め処理。タイヤは70年代カーライルが製造したユニロイヤルブランドのエアフライト20"x1-3/4(S-7)。
リアホイールはこの年代には既に存在しない2速ハブを使用しました。ベンディックス2速キックバックハブはスティングレイモデルでは1970年まで使用され、少しペダルを逆回転させ漕ぎ出すと変速、もう一度少し逆回転させると元のギア比に戻ります。コースターブレーキなので更に逆回転させればブレーキが効く仕組み。
ハブシェルに走る黄色い3本線は通称イエローバンドと呼ばれ、変更不可の18Tスプロケットを持ち、通常のシングルスピードコースターと同じ1:1のギア比から、ロースピードに変速するアンダードライブハブ。このイエローバンドは1969年から採用になった46Tスプロケットに対応します。
(ちなみに1968年まで使用された青い3本線のブルーバンドハブは変更不可の20Tスプロケットを持ち、ハイスピードに変速するオーバードライブハブ。イエローとブルーはごく一部の部品を除き互換性がありません。)
本来スティングレイは前後28本スポークですが、28本仕様の2速ハブ付きリアホイール(又はハブのみ)は,とても値段が高いため、あえて36本スポーク用のハブを入手しリビルト。それに合わせ、リムは36穴のシュウィン純正S-2チューブラーリム(NOS)を使用。この、スポーク前28本、後36本の組み合わせはスティングレイ最初期モデルで採用されていました。
リアタイヤは純正復刻20"x2.125(S-2)のグリッパースリック。2012年、アメリカのBicycle Bones Classic Bicyclesの企画でシュウィンブランドを持つパシフィックサイクルが復刻。復刻車輛とは全く無関係のタイミングで企画生産されたタイヤです。Bicycle Bonesがディストリビューターの為、日本のシュウィン取扱店では購入出来ないタイヤで、スティングレイスリックより接地面がワイドな男前。
シー トは60年代からシュウィンスティングレイのシートを作っていたPerson's製バンダナプリントのバナナシート。シュウィンタグが付く純正中古ほどの価値は有りませんが、純正より探すのが難しいシートです。シシー バーとシシーバークランプは純正。
ハンドルバーはこの年式に使われていた低めのエイプでは無く、1970年から77年まで使用された#7895。グリップはシルバーではなくブルーをセレクト。
そして、本来付いていないフロントブレーキ。昨年に改正道路交通法が施行され、自転車による交通違反がより厳しく取り締まられるようになった事を考え、70年代のシュウィン純正パーツを手本に製作した、サイクルトラッシュオリジナルのキャリパーブレーキアダプターブラケットを介して、現行ダイアコンペMX890をボルトオン。
ちなみにこのアダプターブラケットは企画制作共シュウィン部で行い、当時のオリジナルよりも厚い素材を使用した復刻部品。製作、メッキもその道のプロである部員の協力で実現した物です。
http://www.cycletrash.net/items/3243005
ブレーキケーブルは純正採用のライトグレイのアウターを持つWeinmannのnosで、レバーは70年代のWeinmannのゴールドドット。
高年式2トーンフレームで、年式マッチングを無視するパーツセレクトと言う、簡単そうに見えて意外に難しい車輛でしたが、ラストピースであるパーソンズバンダナシートが見事に車輛の雰囲気を締めてくれたように思います。私を信じて完全に任せてくれたオーナーに感謝致します。
SOLD
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